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Vol.61
ガン、糖尿病、認知症にならない保証はない
 

 


●ガン、糖尿病、認知症にならない保証はない

 
 

 会社経営に行き詰まって相談にいらっしゃる経営者の8割ぐらいの方が、半年〜1年ぐらい前に入院していたというのは、経営難が経営者に心身をむしばんでいたことに他ならないことを裏付けているように思います。
  糖尿病、胃ガン、大腸ガン、脳溢血、などの手術をうけて、「ようやく体力を取り戻してきた。しかし、これ以上、会社経営を続けるだけの自信がない……」と寂しそうに話しをされます。
「頑張れるだけ頑張ってきたから、これでは周りに迷惑をかけるだけだから会社は整理したい……。しかし、女房のために、保険は継続しておきたい……」
と、入院中に会社経営と家族とのあり方について、様々なことを考えていたのだという。

 また、高齢の経営者の場合は、認知症の気配を感じると一緒にいらした家族の方が心配しておられるケースもあります。
  認知症は、高齢化による単なる「もの忘れ」とは違い、いくつかの認知障害によって、社会での生活に支障をきたす状態をいいますが、「アルツハイマー型認知症」と、脳の動脈硬化からくる血管障害で細胞が死滅する「脳血管性認知症」があります。
  最近では、それらの「混合型」や「ピック病」「若年性アルツハイマー型認知症」などもあり、現在では認知症を完治させる薬や治療法がないだけに心配でなりません。でも「運動」「食事」「学習」「環境」などにより、それなりの予防が可能なことが解明されつつという情報もあり、経営者も家族も、誰もが患者になるかも知れないことを十分に認識した上で会社経営に当たるべきではないでしようか。



 

介護を受ける人……介護に携わる人

 
 

隆々と会社経営を続けてきた経営者が突然倒れ、余儀なく車椅子の生活をすることになったときのことを想定している経営者はどれだけいるのでしょうか。
  今の元気な状態がいつまでも続くなんて100%あり得ないことなのに、その重大なリスクを考慮したうえで経営指導をしているコンサルタントや税理士がどれだけいるのでしょうか。
  資産を減らしてしまうより増える方の指導をすることは、その時の支持は得られるかも知れませんが、経営を大局的にとらえた場合に、将来を見据えた経営者や家族の一人ひとりに対し、経営指数には表現することが出来ない「人の尊厳」に関わる大切な考え方を提供して差し上げて欲しいと思います。
  もしも貴方が、介護を受けなければ生きていけない状況になってしまったとき、介護をして下さる人に対して、何を、どんな手段で訴えることが出来るのでしょうか。
  ある介護士の方が、お年寄りからオシッコがしたいと言われトイレに連れて行ったけど、15分以上待っていたけどオシッコは出なかったので部屋に戻ってきたというのです。それから15分後に、再びオシッコがしたいと言われトイレに連れて行ったけど先ほどと同様の結果だったのだそうです。そしてまた……。結局4回とも同じ結果だったそうです。
  そして5回目のとき「またか……」という思いで「オシメもしているし…」と聞き流そうとしていたら、ベテランの介護士の方が気がついてトイレに連れて行こうとしたので「今までに4回も行ったけど出なかったので……」と言うと「おじいちゃんが行きたいと言ってらっしゃるのだからトイレに行きましょう……」と、すると、5回目の時にオシッコが出たことをおじいちゃんがとても喜んでいた……のを見て「おじいちゃんは、よほどオシメにオシッコをしたくなかったのでしょうね……」と、身勝手な判断をしていた自分を恥ずかしく思ったと、私に話してくれました。誰にでもありがちなことですね。
  “身勝手な判断”を相手に押しつけていることがないか、自分なりに振り返ってみたいとしみじみ考えさせられました。


  ●介護従事者は天国に行ける人?

 
 

十分なお金を残し、きちんと介護料を支払いさえすれば幸せな老後が過ごすことが出来るなどと考えるのは、どこかに大きな誤りがあるように思えてなりません。
  「会社を残す」「財産を残す」ということに躍起になっている人々の中に、親族の中の弱者に対する思いやりが配慮されているのか、また、自分自身が、心と身体の面で弱者になるかも知れないことをしっかりと認識した上で財産問題に取り組んでいるのかが、大きな課題のように思います。

 言葉を出すことが出来ない人の瞳の動きから、その方が自分にして欲しいことが理解できたときほど嬉しいことはないと言っていた介護士の方のお話しを聴いたとき、この人は、天国に行ける人だと感じて涙が止まりませんでした。