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Vol.60
「粉飾決算書」から見えるもの
 

 


●「粉飾決算書」から見えるもの

 
 

経営が行き詰まって相談にいらっしゃる経営者から見せていただく「決算書」や「試算表」の99%が粉飾決算をしています。つまり殆どが粉飾してある財務資料だと言うことです。
  二十数年前の自分のことを思いだしてみました。
  嘘八百で纏められ粉飾している財務資料を基にして、いくら一所懸命頑張って経営していたとしても、嘘の数字をベースにして事業計画を立て毎日懸命に頑張っていたとしても、何処まで頑張ればいいのか、事業の目標も定まらないし、会社を経営することも懸命に働いている目的さえも見えない状況では、まるでケージの回転車の中を必死で走るハツカネズミのようなもので、無駄にエネルギーを消耗するだけで、一向に前進することがありませんでした。
いくら頑張って働いていても、利益を生むことが出来なかった企業体質は、一体、何が原因だったのかさえ、明確にならないまま、資金繰りが行き詰まりました。
  取引先が超一流の大手企業でしたから、資金繰りが苦しくなると金融機関から借入することによって何度も危機を乗り切っていましたが、少なからず売上が微増していたので借入ができていたものの、気がつくと売掛金、商品在庫など【資産の部】の数カ所で粉飾を繰り返していました。
  金融機関からは、売掛金の回収率を高めることや、商品管理を徹底して在庫を減らすことを何度も指摘されていました。
  改めて当時の資料を見直してみましたが、倒産した時点のメインバンクからの借入残高は、定期預金と相殺するとほぼゼロになっていました。
  今になって思い起こすと、メインバンクだった金融機関の融資窓口では、全ての状況がお見通しだったのだと思います。


 

●利益追求よりキャッシュフロー管理が大切

 
 

企業経営では、より多くの利益を出すことが良しとされていますが、果たしてそれだけで安定した経営が出来ていることになるのでしょうか。
  決算書で利益が上がっているようになっていても、実際には資金繰りが厳しく借入金に頼らなければならない中小企業の実態は、キャッシュフロー(資金収支)の管理が出来ていないことに起因している場合があります。
  キャッシュフロー経営によって、安心できる健全経営を目指すことを提案したいと思います。
  キャッシュフロー経営が徹底できるようになることで、企業の価値を高めていこうという考え方ですから「決算書では利益が出ていることになっているのに何故か資金繰りが苦しい…」というような。経営者を悩ます矛盾(?)がなくなります。
  キャッシュフロー経営は
@営業部門のキャッシュフロー
A投資に関するキャッシュフロー
B財務管理におけるキャッシュフロー
を、経営の真実の姿を確認することなのです。
  キャッシュフロー経営では、“日本の会計制度”は信用できないと言われるようなサジ加減や判断基準の幅のある考え方などによって自在に体裁を繕うような決算は通用しません。
  最初は極わずかな粉飾であっても、その粉飾の数字を元に経営し続けていると、業績が悪化した時には身動きがとれず更に大きく粉飾をするようになり、あっと言う間に倒産することになるのです。
  営業部門においては“仕入れ→在庫→売上”のフローで、資金をより短く循環させることです。
  支払はより遅く…、資金を寝かすことになる在庫は如何にしたら少なくなるか…、現金売上を中心に回収率を高くするように工夫する…、ということを管理します。 
  詳細の手法については、顧問税理士にどんどん相談して適切な指導を受けることをおすすめします。



  ●見えているのに見えないふりの無関心の罪

 
 

中小企業経営者が倒産パターンに合致しているかどうかは、経営者の一番身近にいる税理士、会計士には十分お見通しな筈なのです。
  “粉飾決算→経営悪化→緊急借入→再粉飾”を繰り返して、やがて倒産する運命を迎えることにならないようにするためには、経営者が填ってはいけない倒産パターンを辿っていることに気がついた先生は、何とかして食い止められるように警告を発して、正常な経営状態にまでに引き戻すように全力を尽くして欲しいのです。
  また、万一その経営実態が危機的な状態であっても、“家族を守る”ための最低限の準備が出来るように誘導して欲しいと思います。
  問題のある経営状態が見えているのに、関わることを避けて見えないふりをする“無関心”を装うような行動は、専門家としてはちょっと寂しい罪つくりな行為ではないでしょうか。