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Vol.57
まだまだ続くリーマンショックの影響

 

 


まだまだ続くリーマンショックの影響

 
 

世界経済の中心的な位置づけにいて巨大化してき た「投資銀行」のリーマン・ブラザーズの破綻が報じられたのは2008年9月15日のことだった。
何と168年の歴史があったというのだか、破綻するのは本当に一瞬だったが、
1930年代に起き た大恐慌の時のようにテントシティー(日本では派遣村)が公園内には入村者が列をなす光景があった。
「投資銀行」は、私たちが日常的に利用するように預金を集めたり、
小切手の決済をするようなことは せず、国や企業が資金調達を必要とするときに投資に応じてくれる銀行で、企業のM&なども行ってい て企業の業績が向上するように支援をして、 大きく成長させそこから利益を得る金融機関です。
また、住宅ローン債権を集めてそれを有価証券の形にした「証券化商品」を世界中の機関投資家に販 売し、そこから利益を得るというハイリスク・ハイリターンの事業が、
サブ・プライムローンが「金融 ウイルス」と変態し、その金融ウイルスが組み込まれた高利回りの「証券化商品」として世界中にばらまか れ、金融機関と金融機関の甘言に乗って購入した企業が利益を享受していたが、不健全なバブルな経済に天にも 昇る気分で踊り酔いしれていた投資家に対するツケは、瞬時にして世界経済を奈落の底に突き落としたのだ。

 

切り捨て御免に遭った下請企業の悲劇

 
 

そんな大手の企業が生き残りのためにとった手段が、 買収、M&A、工場閉鎖、操業短縮、派遣切り、社員切り、下請け企業の切り捨てである。
下請け企業への発注量が20〜30%の減少ではなく、60〜70%に激減しているのだから、どんなに優秀な 経営者であったとしても、このままの体制で会社経営を続けていくことはかなり厳しい状況となってくる。
企業の永続と経営再生のための努力をしようにも、あまりにも急激な売上減少は社員に給料を支払う原資に満 たないばかりか、稼働する機械設備のリース料金、電力料金、水道光熱費のライフラインの支払いにさえも滞り がちになり、断腸の思い出で事業閉鎖を決断しなければならないことになっている。
大手企業経営者が事業縮小、民事再生、破産申請などしても、社長に不正があったような場合以外、社長個人 が会社の債務を負って個人の財産を処分したということはまずあり得ない。
しかし、中小零細企業経営者の場合はそうはいかないのが現実である。事業を縮小するにもお金がかかること になる。会社にその資金がなければ個人がそれを補填しなければならない。
補填する資金がなければ新たに借り 入れしなければならず、果たして金融機関がその資金を融資してくれるのだろうか。 好況時には大手取引先と取引があるということを与信の条件として融資を続けてくれていた金融機関も、親会 社との取引が縮小することで今までの与信度が一気に下げることになる。
時には「要注意会社」として与信ランクが下がることになるわけですから、どのように藻掻こうとも、 必然的に倒産の道をたどることになり、そこには新たな失業者が生まれています。
辛苦を共にしてきた社員に対し、不本意ながら事業を継続できなくなったことを涙ながらに告げる経 営者の心境はいかばかりのものかと察するものの、これから…傍に付き添って再起への支援をするわけ だが、数ヶ月、数年後のイメージを描きつつ、経営者と社員の別れの光景を、リスクカウンセラーとし て複雑な気持ちで静かに見守るしかないのだろうか。
もっと早く知り合い、転ばぬ先の杖になってあげ られていたら…。

  ●再起のチャンスは培った技能にあり

 
 

やむなく会社を閉じることになった経営者と解雇される従業員は、脇に付き添う私よりも平静を保ち、 淡々としている場面にときどき立ち会うが、黙々と片付けをしたり道具類の手入れをしているなどして 平静でいる人々の殆どが、それまでに仕事の中で培ってきた技能を身につけているのだ。
その道のエキスパートといわれるような技能を身に付けている人は、他の会社からかならずと言っていいくら いにお呼びがかかってくるし、社長が仕事仲間に声がけをしてくれて転職できている。
「人間いたるところに青山あり」と言われるように、社長とて同様に、それまでにどれだけいい仕事をしてきた かは、どこかで誰かが見ていてくれるもので、倒産したからといって、夜逃げをしたり、ヤケクソになっていた のでは決して再起の道を辿ることはできない。
芸は身を助けるではないが「技能は身を助ける」と言うように、今さら言うまでもなく平時の仕事に向かう姿 勢が大切なのだということだ。
大手企業の話題として「管理職以上の社員は10万円以上の自社商品を購入しろ」と言 うお達しが出たというが、社員も経営者と一丸となって会社再興のために力を合わせてい るようだが…、
もともと余裕のない中小零細企業では、明日の生活に直結する収入を確保 しなければならないから大変だ。