都内・港区に住んでいるお嬢さまからの相談でした。
そのお嬢さまは、重度の脳卒中で寝たきりだった
お父様を看病する毎日がつづき、
満足に働くこともできずに経済的にもかなり苦しい状況でした。
生活費と医療費は、2ヶ月ごとにお父様の国民年金が
郵便局に振り込まれてきますが、お父様は長期にわたって
自営業を営んでいた方でしたので、国民年金1ヶ月にして
6万円というありさまでした。
これでは到底生活をすることができません。
お嬢さまは、看病の傍らアルバイトを続けて
家計費を捻出していましたが、それでも父娘2人の生活は
決して楽なものではなく、貯金をするどころか…
時々、サラ金から借り入れしたりしながら
節約生活の家計費の足しにしていました。
父娘は、港区内に古くからある商店街の一画にある
借地の店舗兼住宅に住んでいました。
お爺さまの時代から続いているお店だったこともあって、
お父様が生きていらっしゃる間は…
お店だけは何とか続けていたいと頑張っていましたが、
商品を仕入れるための資金さえも…
ついつい看護費用にまわしてしまってい有り様でした。
しかし…献身的なお嬢さまの看病も空しく、
アルバイトに出かけている間に、
78歳だったお父様はひとり静かに息を引き取っておられました。
慌ただしく葬儀でしたが納骨を済ませ…ホッとして…
ようやく自分の将来のことを考える気持ちになってきました。
アルバイトではなく…経験が生かせて長く勤められるような
就職先を探そうと、就職活動をはじめた頃、
地主から1通の書留が送られてきました。
開封してみると「借地権更新のお知らせ」と書かれた通知書でした。
港区の外れとはいうものの…
友人に頼んで近隣の取引事例を調査してもらうと
1坪当たりの実勢価格は500万円を超えていることがわかりました。
25坪の借地ですから、更地評価額にして計算すると1億2500万円です。
古い非堅固な建物(木造住宅)なので、
借地権の更新料は更地評価額の5%となるので、
更新料だけで625万円になると計算書が同封されていました。
お嬢さまにとっては…まさに青天の霹靂です。
お父様が亡くなったからと云って…
生命保険金が入ったというわけでもありませんでしたし、
蓄えのすべて使い果たしていましたから、
600万円を超える「借地権更新料」なんて…
どこからも工面することはできない状況でした。
「さぁ、どうしよう…。」とお嬢さまは頭の中が真っ白になり、
食事も喉を通らず、2週間で10sも痩せてしまうほどの状態でした。
精神的にもウツ状態がつづき、ご近所の方がスーパーで
すれ違った時にご挨拶をしても、まったく気づかないほどひどい焦燥ぶりでした。
お父様の看病疲れの時とはまた違って、
必要なお金の額が大きすぎる故の混乱が彼女をそうさせたのでしょう。
父があれほどまでに拘っていたこの家を売却処分するには
忍びないしお金を作るには、祖母が亡くなったときに
お父様が相続していた朽ちかかった家屋を処分できないものなのだろうか…
と考えました。
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