トップページにもどる  

Vol.43
ある日借地権の更新料の通知が届いた…
 

 

 

ある日借地権の更新料の通知が届いた…

 
 


都内・港区に住んでいるお嬢さまからの相談でした。
  そのお嬢さまは、重度の脳卒中で寝たきりだった
お父様を看病する毎日がつづき、
満足に働くこともできずに経済的にもかなり苦しい状況でした。

  生活費と医療費は、2ヶ月ごとにお父様の国民年金が
郵便局に振り込まれてきますが、お父様は長期にわたって
自営業を営んでいた方でしたので、国民年金1ヶ月にして
6万円というありさまでした。
これでは到底生活をすることができません。

 お嬢さまは、看病の傍らアルバイトを続けて
家計費を捻出していましたが、それでも父娘2人の生活は
決して楽なものではなく、貯金をするどころか…
時々、サラ金から借り入れしたりしながら
節約生活の家計費の足しにしていました。

父娘は、港区内に古くからある商店街の一画にある
借地の店舗兼住宅に住んでいました。
お爺さまの時代から続いているお店だったこともあって、
お父様が生きていらっしゃる間は…
お店だけは何とか続けていたいと頑張っていましたが、
商品を仕入れるための資金さえも…
ついつい看護費用にまわしてしまってい有り様でした。

しかし…献身的なお嬢さまの看病も空しく、
アルバイトに出かけている間に、
78歳だったお父様はひとり静かに息を引き取っておられました。

慌ただしく葬儀でしたが納骨を済ませ…ホッとして…
ようやく自分の将来のことを考える気持ちになってきました。
アルバイトではなく…経験が生かせて長く勤められるような
就職先を探そうと、就職活動をはじめた頃、
地主から1通の書留が送られてきました。
開封してみると「借地権更新のお知らせ」と書かれた通知書でした。

 港区の外れとはいうものの…
友人に頼んで近隣の取引事例を調査してもらうと
1坪当たりの実勢価格は500万円を超えていることがわかりました。
25坪の借地ですから、更地評価額にして計算すると1億2500万円です。

古い非堅固な建物(木造住宅)なので、
借地権の更新料は更地評価額の5%となるので、
更新料だけで625万円になると計算書が同封されていました。
お嬢さまにとっては…まさに青天の霹靂です。

お父様が亡くなったからと云って…
生命保険金が入ったというわけでもありませんでしたし、
蓄えのすべて使い果たしていましたから、
600万円を超える「借地権更新料」なんて…
どこからも工面することはできない状況でした。

 「さぁ、どうしよう…。」とお嬢さまは頭の中が真っ白になり、
食事も喉を通らず、2週間で10sも痩せてしまうほどの状態でした。
精神的にもウツ状態がつづき、ご近所の方がスーパーで
すれ違った時にご挨拶をしても、まったく気づかないほどひどい焦燥ぶりでした。

お父様の看病疲れの時とはまた違って、
必要なお金の額が大きすぎる故の混乱が彼女をそうさせたのでしょう。

父があれほどまでに拘っていたこの家を売却処分するには
忍びないしお金を作るには、祖母が亡くなったときに
お父様が相続していた朽ちかかった家屋を処分できないものなのだろうか…
と考えました。




 

賃貸借契約がない居住者への明け渡し請求…

 
 

しかし、その家には大きな問題が残っていました。
家の構造的に問題があるのではなく、
生前、お父様が叔母に頼まれて叔母の友人に
「短期賃貸」という条件にして毎月4万円で貸していたものなのです。

  叔母の友人でもあったし、半年という短期の条件だったので
「賃貸借契約」を取り交わさないまま、
すでに5年半が過ぎていました。
とりあえず家賃だけは毎月きちんと入金していたから…
と云うことで放置していたようです。

  その当時、間に入って世話を焼いてした叔母もすでに他界し、
お嬢様がその入居者のことで分かっているのは…
氏名だけで年齢さえも分からない始末でした。

 相談を受けたリスク・カウンセラーは問題の整理をしました。
兎に角、家を明け渡して貰わなければ、
売却したくても売却できない状況です。
この家が売れれば、借地権の更新料も支払え、
最近話題の商店街なので1階の店舗の部分を補修すれば
貸せるようになります。将来への蓄えも出来るようになる…
と云う計画をたてました。

  早速、入居者と接触することにしました。
まずは…お嬢様がこの家を売却しなければならない事情をお話しして、
明け渡して貰うことを理解していただくことからです。
訪問を繰り返します。6度目の訪問でようやく入居者と
会えるようになりましたが、当初は「お金がないから引っ越しが出来ない…」
の一点張りでした。その入居者は生活保護を受けているとのことなので…
区の窓口で相談し、区の担当者の協力を得て、
代替えの住居を探して貰うことになりました。
とは云え、貸し主側の都合で明け渡しを要求するわけですから
移転費などの諸経費は、お嬢様がある程度の金額を用意することで
明け渡しの合意を成立させることができました。

ところが…又ひとつ問題が出てきました。
家屋はお父様名義、土地は祖母の名義のままなのです。
祖母の名義のままの土地は「遺産分割協議書」を作成し
相続人全員から印鑑を貰いお嬢様の名義にしなければ
売却することが出来ません。
司法書士に支払う費用がありません。
ある程度の時間とお金がかかる問題がでてきました。
お父様が、場当たり的に対処して、多くの問題を先送りにしてきた結果です。

それを何とかするのがリスクカウンセラーの仕事です。
それから約1年をかけて問題を整理し、
お嬢様はご紹介した友人の会社で元気よく働きはじめ、
1階の貸し店舗は…明るいクリスマスソングの流れる小さなお店となり、
店内には若い女性が溢れるほどの繁盛ぶりです。

サンタクロースは…こんな「小さな豊かさと安心」を見て
ホッと胸を撫で下せるときが嬉しいのです。Merry X'mas !