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Vol.31
「恒産」無ければ…よって「恒心」なし

     
  ●「恒産」無ければ…よって「恒心」なし
 
 

平成15年2月に『RFCレポート・創刊号』を発行してからあっと言う間に3年間が経過し、お陰様で本号で36号になります。
  リスク・カウンセラーとしての相談業務も気がつくと20年になっていました。素より「売上目標」などと言うような数値目標を持って取り組む仕事ではありません。広告宣伝をするわけでもありませんでした。
ですから「誰々さんから聞いた…」と云うようにして相談依頼者がどこからともなく訪れ、その相談者の心の叫びや肉体の叫びを聴きつつ…日々淡々とその対応に取り組んできました。

 特に、債務超過に陥って会社の資金繰りが行き詰まっているような場合には、まさに時間との戦いであり、まかり間違えると相談者が命をも落とさんばかりの事態になっていることもありました。

 リスク・カウンセラー存在を知らなかったばかりに、債権者からの執拗な催促に耐えきれずに自ら命を絶ってしまった人もありました。
  知人に伴われて残された家族が相談にやってきたこともありました。一緒に現場に赴き、白布で顔を覆われた仏様に献香の挨拶をしてから、傍らのちゃぶ台にノートを広げ、ご家族や関係者から事態の顛末を少しずつ話を聴き、問題点と今後の対応を考えるのでした。
  涙で曇るご家族のお話を伺うのはかなり辛いものがありました。

 何故なら、22年前の自分にも…故人がとった行動と同じことを決断しかけたことがあったからです。僅か数行の走り書きしたような数通の「遺書」しか本人の遺志を汲み取るものはなく、その遺志さえも実現できない状況を前に、頭を抱えてしまうようなこともあります。
  生命保険金額をはるかに超える債務金額があったため、遺族はその家に住み続けることさえできないという現実がありました。
  10ヶ月後には、まだ整理が終わらないうちに予てから患っていた遺族の1人が亡くなりました。葬儀の段取りも一緒にすすめなくてはなりません。

 そんなわけですから…リスク・カウンセラーの仕事だけでは…安定した収入(恒産)があるわけではありません。
  でも…ありがたいものです。私自身を救ってくださるかのように、私のもう一つの会社(不動産仲介業)に、仕事を持ち込んで下さる方が現れたのです。私にとっては神様のような方です。お陰様で…どんなに辛い人からの相談にも…どんな複雑な問題にも…いつも平常心(恒心)で接することが出来ています。

 
     
  ●生かされて 感謝感謝の 活き活き人生
 
 

  生きていることは素晴らしい。生きているからこそ喜怒哀楽の出来事に一喜一憂することができる。生きているから合縁奇縁の出会いがある。
  生きているからこそ人の役に立てる。そして、生きているからこそ体感してきたことを伝えていく義務がある。
  以前にも、このレポートで書いたことがあるかも知れませんが、私がいま、リスクカウンセラーの仕事を続けているのには2つの理由があります。

 その一つは、私が何度か窮地に立たされ、霧の中に佇み自分の置かれた立場が見えなくなっていた時、私の目の鱗を取ってくださった方の一言が忘れられないことです。

 二つ目は、「生きがいづくりアドバイザー」の研修の場で衝撃的な話を聴いたことです。
  話とは…視力障害の方が『白い杖』を胸元に抱いて佇んでいたら、それは「私は自分の居るところが分からなくなったので…どなたか導いてください…」という意味があるのだと教えていただいたことでした。
  「50歳にもなってそんなことさえも知らなかったなんて…」とひたすら涙が出ていつまでも止まらなくなった事がありました。
  それ以来、誰かと話をしたときには必ず『白い杖』の話をするようにしています。

 人は突然の出来事で混乱しているときは、誰に相談していいのかさえも分からなくなるときがあります。
  経験値に照らし合わせれば…未経験者には見えないものでも簡単に見えてしまう…ということは日常的にあることです。
  これからも…私を生かさせて下さる方々に感謝しつつ、少しでも多くの方と出会ってお役に立てることを願う日々です。