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Vol.99

◆“真実開示”は経営改善の第一歩だが…
 
 

◆“真実開示”は経営改善の第一歩だが…

 
 



 1990年にファイナンシャル・プランナーの資格を取得した頃は、世の中まだまだ右肩上がりの

時代であって、ファイナンシャル・プラン表やライフプランを作成するのも年率●%の伸び率で

20年、30年のプランが出来上がる。

 誰もが浮かれるように右肩上がりを信じて、いくつもの投資用不動産を購入していた傍ら、

人々の異常な言動に気がついたのが96〜97年頃でした。

 真実を語ろうとしない相談者からの情報で作り上げたプランは、言うなれば総て絵に描いた餅

であったわけで、何とか本音の話を引き出して現実を見据えたプランニングをしたいという

想いからカウンセラーを修得することになったのです。

1年間でカウンセリングの基礎を学び、2年、3年と毎年新たなカリキュラムを学びながら

現在に至っていますが、気がつけば、その間にバブルが崩壊して経営に行き詰まった

小規模経営者の悲痛な叫びを受け止めることが日常的になってきました。

 しかし、経営の危機を背負って相談に来られるクライアントには、

じっくりと時間をかけながら心の整理をしていくほどの余裕はありません。

仕入業者への対応、銀行・サラ金との金融折衝、家族や従業員をどのように守るか……など、

胸の中をかきむしられるような焦燥感を、カウンセリングの中から一つ一つ吐き出してもらうのです。

それまでは、どうにもならないと感じていた深刻な不安感から、解決の手段がある整理された

問題点へと、相談者の心のざわめきが穏やかになっていきます。

 中小企業経営者こそ、日常からリスク・カウンセラーとの連携をもち、

心の中のモヤモヤを吐き出しておけば、問題が起きてから慌てて混乱解決の

パートナーを探すようでは再生への道を絶たれてしまうことも十分に考えられます。

◆イエスマンの専門家は経営者の味方ではない

専門家との連携をしようとする経営者は、ともすると大きな勘違いをしていることが多いことに

気づかなければなりません。

 専門家と連携していれば、万一、その企業に問題が起きてもその専門家が総てを

解決してくれるものと思っているとしたら、それは大きな誤りと断言できます。

 専門家との連携が十分に機能している状態とは、問題が起きていない日常の中から、

経営者が少しでも疑問に感じだことがあれば、その疑問を即座に専門家に聞いてもらえるような

良好な関係を維持しておくことなのです。
 
 経営者が誤ることは、経営者の意見に対して「イエスマンの専門家」を身辺に集めてしまう

事ではないでしょうか。

 経営者が考えていること、経営者が疑問に感じていることなどが、

専門家の視点で捉えたときに経営者と大きく意見が異なったときなどに

「自分とは考え方が異なる」からという理由で遠ざけてしまうとは、

何の為の専門家との連携なのか理解に苦しむものです。

 そんな経営者は、いつになっても傲慢な経営から抜け出ることはできないばかりか、

自分が気持ちよくなる「甘言」で喜ばせてくれる〈おためごかし〉が上手な人を求めて誤った

経営を繰り返し「独りよがり経営」に溺れていきます。

 組織の中にも、組織の外にも、経営者と異なる意見を持つ人を大切にしている企業は、

万一の時に経営者を支える底力となって苦しい経営を蘇させることになっています。

リスク・カウンセラーは、問題が発生してから解決することを支援するのではなく、

問題が発生しないように日常的に支援することを使命としています。