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Vol.87

●上司も部下も適材適所であったのか
 

 


 ●上司も部下も適材適所であったのか


 
 


中小零細企業経営者が経営に行き詰まりリストラに取り組むとき、常套手段のように真っ先に手をつけるのが従業員の解雇だ。

 そうした時の経営者の考えは、優秀な社員には残ってもらい、そうでない社員には辞めてもらいたいと考えている。

 優秀な社員とそうでない社員とは何が異なるのだろうか。仕事の理解度?、仕事の正確さ?、仕事の処理速度?、情報伝達能力?、折衝力?、上司との折り合い?、会社への貢献度?、素行や言動…など、ときによっては容姿までもその判断基準にしていた会社があったが、業務上の資質とは無関係な部分がリストラするか否かの基準になっていたのでは何をか言わんやである。

 経営幹部が、一人一人の適正を熟知した上で適材適所の組織編成になっていたかどうかも、大きな問題であったのではないだろうか。

 適所に配属させることによって思いかげない能力を発揮する場合だってあったはずだし、上司の指導不足によって能力を発揮できていない社員もいたかも知れません。

 そうして捉えてみると、それを決める社長を筆頭ににして役員、部長・課長などの幹部でさえも適材適所であるのかが疑問となる場合がある。

 ○○さんが社長なら…、○○さんが営業部長なら、○○君が技術部門の責任者だったら…、などと言うように、十分な能力が発揮できて企業が活性化することだって十分あり得ます。

 幹部研修、社員教育に日頃から十分な時間と経費を掛けて人材能力を高めている会社は、そう易々とは倒れることがないはずです。

●経営者の慢心ほど危険なものはない
創業経営者でも、二代目経営者であって、売上がグングン伸びて資金が潤沢な時ほど気をつけなければいけません。社長…社長と甘言巧言を並べて近寄ってくる連中を、自分の財産を目当てだと見下し鼻高々になって慢心しているとやがて地獄の苦しみを負うことにもなる。

 経営者は努力をすることによって山の頂に登ることはできたとしても、その山の頂が気に入ったからと言って、ず〜っと頂に住み続けることは余程の事がない限りできないのだ。

 山の頂に物資を運び続けてくれる人、つまり、他の役員や社員達が物資を運び続けてくれなければ、山の頂に家を建てることができないばかりか、日々の食料や水が供給され続けなければ到底できることではないのだ。

 トップに立つ者は、部下に対して心からの感謝の日々を続けていかなければならないのだ。

 

●部下は上司の鏡なり、部下に腹を立てるな…

 適材適所の観点で会社組織を考える、社長も社員も一緒なのだ。社長であるべきでない人が社長であると、組織が組織としての体をなさなく、外部からの信頼が得られない場合さえある。そういう場合は、早々に他の者にその地位を譲ることによって、新たな風の流が起こるのだ。それこそ経営戦略というのではないだろうか。

 幹部社員の中には、部下が自分の思うようにならないことで”かんしゃく”を起こし部下を無視したり、部下にキツク当たったり、机を蹴ってその場を離れるなどの軽度の”パワハラ”の光景も目にする。

 部下は上司の鏡だと考えると「原因は上司にあり…」と言える。自分の姿を部下が鏡となって表現しているのだと考えるとそら恐ろしく感じるが、地道な教育の積み重ねによってたくましく成長したと感じたときは、上司としての歓びもひとしおであるだろう。むしろ、部下に感謝すべきことなのである。

数十年前に先輩が教えてくれた大切な言葉…

かんしゃくの くの字を捨てて ただ感謝

 これこそ、部下をもった者が心がけるべき、奢らず、腹を立てず、自分の鏡だと思って部下の能力を磨きあげる努力こそが、信頼で結ばれた強靱な組織を形成してゆくことになるのではないだろうか。

 経営陣の確固たる経営戦略を作り上げることも大切だが、幹部社員には外部からの風を取り込む社外研修を受けさせることで新たな風が生まれる。

 経営陣への社員からの問題提起に上司が熱心に耳を傾け、それを経営に反映できる風土づくりを支援して企業再生を図るのもリスク・カウンセラーの役割だ。くどいようだが「人財育成」こそが企業再生への第一歩である。