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Vol.77
“保証債務”は、りっぱな“負の相続財産”なのだ…
 

 


 ●“保証債務”は、りっぱな“負の相続財産”なのだ…

 
 

 

 多くの不動産を所有する資産家や、中小企業経営者が突然亡くなったとき、預貯金、不動産、有価証券、美術骨董品、生命保険金などは、存在を身近に感じられる『プラスの資産』です。

 それらは文書類や現物であったりすべて目に見えているものばかりなので、相続人は真っ先に確認していることでしょう。

 それでは『マイナスの資産』の主なものを挙げてみると以下のようなものがあります。

@住宅ローン、キャッシング残高、借入金
A割賦残高、クレジットカード利用残高
B公租公課等(固定資産税、住民税、社会保険料)
C保証債務(借入金、リース契約、友人の連帯保証人)
D信用保証(包括的信用保証、身元保証、賃貸借契約)

 金融機関に残高照会をすることで“借入金”などの金融の“負の資産”が確認でき、さらに市町村の資産税課で“名寄せ帳”を縦覧することによって、被相続人が所有する不動産の一覧が確認できます。

 そして法務局では不動産登記簿謄本の乙欄の記載内容から、抵当権設定などの金融機関以外の債権者を確認することができます。

 被相続人が“企業経営者”の場合は「C保証債務」を絶対に見逃すことはできません。企業の事業の借入金や設備機器のリース契約は間違いなく連帯保証人になっていますので必ずチェックが必要です。

 それでは、自分と同じように事業をしている友人に頼まれて連帯保証人になったことは、本人が書面として親族に分かるようになっていなかったらどうなるのでしょうか。

 社長が亡くなって相続を実行するときに、被相続人が友人の連帯保証人になっていることを知らないまま相続してしまい、それから数年経ってから友人の会社が倒産し連帯保証人としての保証債務が顕在化したら、相続人はそのマイナス資産も相続しなければなりません。

 

●“包括的信用保証”“身元保証債務”は相続財産ではない

 
 

相続財産としてあげられるものは、主たる債務が、消費貸借から発生した債務や、賃貸借契約による債務となり、被相続人に属した義務として、相続人に承継されることになります。

 親族が就職する際にもとめられる身元保証書の署名は『身元保証債務』といい、責任の限度額も保証期間を定めない債務を『包括的信用保証債務』と言います。

 これらの信用保証債務は、その保証人が死亡することによって消滅するのですが、それは、その責任の及ぶ範囲が“将来にわたって…”と言うように極めて広汎となるためです。

 ただし、例外なのは“身元保証契約”によって、発生してしまった保証人としての債務の履行をしている場合は相続財産の対象となります。

 被相続人の相続財産をしっかり調査もせず、目の前にあった僅か100万円の“プラスの財産”に手をつけてしまったばかりに、1億円以上の“マイナスの財産”までも相続したことになってしまうのですから、相続を受けるときはマイナスの財産をしっかり調査してからでないと、一生かかっても返済できないような財産を相続することにもなりかねませんので、恐ろしい事態になってしまうのです。


  ●“被相続人の債務額が不明の際は相続放棄”の延長申請を!
 

“プラスの資産”と“マイナスの資産”を差し引いたら明らかにマイナス資産が多い場合は、『相続放棄』をすることになるのですが、そのバランスが拮抗していて調査の結果が確定するまでに時間がかかるような場合は、家庭裁判所へ相続放棄の3ヶ月の期間延長を請求することができます。

 推定被相続人の資産がマイナスの資産が明らかに多いからと言っても、忘れるといけないからと言って生前に相続放棄をすることはできません。

 相続放棄ができるのは、自分が相続人になったことを知った日から3ヶ月以内に、管轄の裁判所へ“相続放棄”の申立をしなければなりません。 相続人が気をつけなければならないことは、この3ヶ月の期間を過ぎてしまうと“相続放棄”ができなくなってしまうことです。

 “プラスの資産”も“マイナスの資産”も総て相続しなければならないので、ウッカリしていたでは済まされません。十分に気をつけたいものです。

 相続放棄の期日を間違えて、相続人が破産しなければならないということだけは絶対に避けたいものです。