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Vol.76
“危言”に耳を傾けず倒産街道に行ってしまう経営者
 

 


 ●“危言”に耳を傾けず倒産街道に行ってしまう経営者

 
 

 バブル経済が崩壊してから早くも十数年が経ち、産業構造や経済の動きが大きく変革していることは万人が周知するところです。

 企業として生き残るためには、変革に合わせながら経営者の意識そのものも変えていかなければならないはずなのに、会社内部から湧き上がる経営者に対する声なき問題提起に気づかず、草茅危言(そうぼうきげん)も何のそのといった調子でいたのでは、その経営者は間違いなく倒産街道への道を辿ってしまうことになるでしょう。

 新たな活路を見いだせないで混沌としている経営者は、いまや、経営者が自ら先陣を切って額に汗して働くようにし、常に部下の模範となるようでなければ、苦境を打破することなどできないはず。

 公私混同のケジメがつけられず、十数年前の時のように安穏としている経営者に「改善・改革」の提案をしても、残念なことになかなか耳を傾けてもらえないのは残念でなりません。

 「起死回生」の相談にきているのに、自分流のやり方は変えられないと言うのだから始末に負えません。
そんな経営者に限って“美辞麗句”を言ってくれる人のところへは足繁く通い、気づかないでいた問題部分を指摘するような耳障りの良くない意見を言ってくれる人の処へは、足を遠のける。

 分からないではありませんが、経営者たるもの、その選択肢を誤ると、収拾のつかない事態に陥ることは必至となることでしょう。



 

●問題解決の相談が下手な隠蔽体質の経営者

 
 


 経営危機に直面したときに専門家に相談に来る経営者のうち、問題解決までのスピードが早い経営者の特徴は、経営者が自ら資料を作成し、問題点を解決する優先順位をあらかじめ整理し、過去の失敗や経営者の引き起こした失敗を包み隠さず開示してくれることです。

 一方、問題解決までの時間が前述例の数倍もかかる経営者の特徴は、概して隠蔽体質の経営者だと言えるでしょう。準備資料に一貫性がなく、提示をお願いしていた資料も小出しで提出され、総てを開示することを極端に避けているような経営者の相談は、時間ばかりとられてしまい問題解決が思うように捗りません。

 そのつど提示される限られた資料から問題解決の意見を求めてくる『群盲象を撫ず』の状態では、意見を述べることさえ無謀な行動だと言えるのです。

 リスク回避の要諦は、短期間に問題の全体像を捉えることであるわけですから、早期にスクリーニングによる結果をまとめ上げなければなりません。

 社長自らが資料作成をしない場合であっても、資料の内容について社長が熟知していなければ、危機状態から“起死回生”を図ることなど到底不可能だと思います。



  ●大局を観て「決断」、速やかな「実行」
 


 時に、経営者は常に孤独です。経営陣を招集して経営危機に対する意見を求め、全役員が異口同音の意見に纏まることになったとしても不安を感じ、意見が纏まらなくてもその混乱を纏め上げるための智慧と勇気が求められます。

 経営者が、我が身の保身を優先して判断した結果には他の経営陣や従業員のパワーによる『復元力』は期待できないものとなるでしょう。

 経営者が、我が身を捨てて“起死回生”の決断をしたときは、社内からの『復元力』が全開するだけでなく、金融機関や取引先などの外部からの支援も得られることになる可能性が高い。

 大局的な観点で判断をして決断したならば、その計画を速やかに実行に移す機敏さが必要になります。

 “起死回生”の方向性で戦略をたて再起に臨むときは、平時の3〜5倍の時間の早さで事態が進展していくことに留意していないと、思わぬアクシデントによって余儀なく計画変更ということにもなりかねないのです。

速やかなスクリーニングの為には、全体像が把握しやすい情報提供が大切であることは前述の通りです。あとは、経営者が、自ら胸襟を開き、人間としての裸の自分をさらけ出すことによって、時には社員と融合し、時にはカウンセラーと融合し、全身全霊を出し切って臨んでこそ、目的が成就する可能性が高まるのです。経営者の勇気ある行動は、危機に直面したときにこそ発揮しなければなりません。

 危機に直面したときの経営者は、心身共に疲れきっているのですから、悩みごとを出し切って楽になることによって新たな活力が生まれてくることになるのに……。そのことを理解してくれると、問題の8割は解決したことになるのです。