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Vol.71
ウツに苦しむ人々との出会いの日々
 

 

◆ウツに苦しむ人々との出会いの日々

 
 

 自分がリスク・カウンセラーとなって債務超過で経営に苦しむ中小零細企業の経営者から相談を受けるようになって20年近くなります。
 相談者は、経営者だけではありません。
 高齢になった親と同居して、毎日の介護に疲れて爆発させたい気持ちを抑え、それが精神的な重圧となって苦しんでいる人、親族間で発生している相続問題で混乱している家族もあります。
 家族問題に引き込まれてウツになり、仕事に就けない若者が悩んでいるといってその青年を連れて相談にいらっしゃる方もあります。
 そうしたウツの人々との出会いは、それぞれ偶然の出会いであって、意図的にウツの人を発掘しているわけではありません。

 小規模企業の経営者が資金繰りが順調であったときはともかく、資金繰りが厳しくなったときに一度も「ウツの気分」にならなかった経営者が果たしているでしょうか。
経営不振で相談にこられる経営者との出会いは、多くの場合「ウツ症状」の人との出会いと言っても過言ではないと感じています。
金融機関との問題、取引先との問題、社員との問題、家族との問題など、その経営者の「抑うつ気分」を引き起こす要因は「仕事」と「家族」との関わりの中にあると考えられます。
経営不振や経営トラブルの状況を、社員や家族にすべてオープンに出来るような経営者であれば、その経営者の「抑うつ気分」はそうでない経営者の半分以下になっているであろうことは、自分の体験からも十分に理解できるし、来社される多くの経営者のそれぞれの様子を拝見しても間違いないと感じています。
「抑うつ気分」になっている経営者との歓談で感じられるのは、明らかに気分の落ち込みを感じていることや、仕事ばかりではなく、趣味や会食などをしていてもスカットした気分になれない「モヤモヤ感」や「むなしさ感」を感じているようです。特に女性経営者にはなぜだか「悲しい」という気持ちで、胸のあたりがザワザワしているというのです。
リスク・カウンセラーとして経営者の相談をはじめた頃のことですが、「抑うつ感」でどうしようもない精神状態の人を前にして、ナニを聴き、どんな言動で対応したらいいのかが自分自身が悩む大きな問題でもありました。
プライベートの話題になっても、昔は楽しめていたことであっても現在はほとんど興味もわかず、楽しいとか嬉しいとかの嬉々とした気分になれない自分を感じると言われます。



 

◆自分にはナニがしてあげられるのだろうか

 
 

 経営者の場合は「抑うつ気分」であっても、よほどのことがない限り日々の仕事に追われて、じっくり自分を振り返る時間などない状態で、心配なのはそれが身体の健康状態の異常となっている場合が多いように感じています。
 糖尿病、高血圧症などが原因で突然倒れてしまう事例もありました。古人から語り継がれている心と体は一体であるという『心身一如』による当然の症状です。
 言うなれば『健全なる経営は…健全な精神と健全な身体を作る』とも言えるのでないでしょうか。

 リスク・カウンセラーとして、1番つらい気持ちになるのは、ウツ症状がひどく働きたいのに働けない青年から「自分には何の価値もない……」と暗に「死にたい」と言わんばかりの自殺念慮の言葉を聞かされたときには、カウンセラーとはいえども、どうにもやるせない気持ちで少し落ち込んでしまいます。
そうした会話になった青年とは、頻繁に連絡を取り合うように心がけたり、青年と会える次回の日程を確認しあったりして、関係が途切れないように心がけるようにしています。
カウンセラーとして心がけていることは、自分自身が「健康な肉体」と「健康な精神」を維持し続けることであり、そのためには、社会環境との関わり方、人間関係のあり方、家族との関係を維持しつつ、万一、辛くなったときには、自分の叫びを吐き出せる環境を作っておくことが大切であると思っています。
何事を考えても考えがまとまらない、些細なことが決断できなくなったら……、すぐにでもリスク・カウンセラーにご相談ください。





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コーヒーブレイク    
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 東京スカイツリーが少しずつ高くなるにつれて、古い町並みの浅草の景観が変わってきました。
 来春には、左の写真の上辺を突き抜けてしまうことになるでしょう。 
 完成の暁には、低迷していた浅草にとって街の活性化の大きな起爆剤になってくれれば、江戸っ子として人ごとではなくホッとした気分になれるでしょう。