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Vol.66
理不尽な契約に引き込まれている相談者
 

 

●理不尽な契約に引き込まれている相談者

 
 

友人の紹介で、横浜に住んでおられる70歳代のご両親のご自宅の件でご相談者がありました。
  お話しは……
  ご両親のご自宅は、築48年の一戸建て住宅です。土地は借地権で約40坪あります。80歳を過ぎた地主とはトラブルもなく、8年前に借地権の更新を済ませ盆暮れの礼節も欠かさずに良好な関係にありました。その地主が半年前に亡くなり不動産管理会社が地代の管理をするという書類が来ていましたが、すでに1年分支払ってありましたので、何の問題もないと考えていました。
  ある日、不動産業者が訪ねてきて「この土地は当社の所有になりました。ついては、借地人の方に底地権を買っていただけないものかと相談にまいりました……」と、路線価、近隣の取引事例価格、などと一緒に、具体的な金額提示をし、次回の訪問日を告げて帰って行きました。

  急遽、家族会議を開きどのようにすべきかを話し合うことにしましたが、借地権に対する十分な知識がないため、結論が出ないまま約束の日が来てしまいました。「もう少し時間をください。専門家の意見を聞いてから……」と言うと、その業者が「借地借家の専門家の団体を紹介しましょう……。第三者の客観的なアドバイスを受ける方が納得できるでしょう。」と、その団体を紹介してもらい家族揃って相談に行きました。
そんな経緯があってから1年後、私の友人に「来週契約することになったのですが、何となく不安になってきたので相談にのってくれる人はいないだろうか……」と言うわけで、その契約内容に直感的に異常な理不尽さを感じた友人が、「緊急の相談があるから聞いてやって欲しい…」ということになったのです。



 

●すべてを話し切れていない?・・なぜ隠しているのか?

 
 

 関係書類を拝見し、前述のお話しを聴かせていただいたが、契約書もさることながら、本人達は業者の物件を未だ見ていないと言うことなので、全部の調査が終わるまで契約日を直ちに延期するように先方に通知するように言うものの、ご本人達はなぜかそれを躊躇うような言動を並べていることからも、これまでの経緯の中で、未だ話し切れていない何かがあるような印象でした。

 早速、2つの物件をそれぞれ現地に行って確認し、写真を撮り近隣調査と法務局と区役所から法的規制等の条件などの情報を収集し物件査定をしました。
  それにより分かったことを改めて整理してみると……
@当初底地権を買い受けていた業者から、他の業者に売却されており、新たな所有者との交渉になっている。
A経済的な理由から、業者が提示するように底地権を購入することができない。
B業者から12年後(次の更新時)に明け渡してく れと言われた。
C業者所有の不動産を代替え物件として等価交換をすることを提案された。
D契約書の内容は、業者物件(再建築不可物件のため評価額は500万円以下)と、相談者物件(現時点での借地権評価額は1500万円)とを同時売買する契約であった。
E新たな業者の言動には威圧感があり、強行な行動には恐怖感さえ感じている。

相談してきた友人には、この案件は契約を中止すべきであることを伝え、できれば家族全員が理解できるように調査資料の説明をしたいと言うと、ホッとしたように「ありがとう。私も同感です。そうして上げてください……!」とのこと。
  本人に直接連絡を取り、とりあえず全体像を説明して契約中止を勧めましたが、なぜか中止のことに触れると、「それば出来ない…」と言わんばかりの受け答えになることが、とても気になっていました。
  「なぜだろう……。未だ何かそれが出来ない理由があるのだろうか……」釈然としないまま、後日、その日程の返事をいただくことにしました。
 





  相談者との連絡が途中で途絶えたとき……  
 

急いで事を進めなければならないこと故、弁護士の客観的判断を仰ぎ、必要であれば弁護士に引き合わせして安心してもらえるように段取りを立てていたが、2日経っても1週間経っても、本人から連絡がない。
  どうしたのだろう……と思えば思うほど、そもそもの顛末や契約内容の理不尽な部分が浮き彫りになり、強行に契約を進めようとしている業者の魂胆に、なぜか腹が立ってくる。
  「シロウトを騙してまで商売をするな!」と声高に叫びたい。川の流れに溺れかけていた人が友人に相談したことで岸部に上がりかけたのに…何故、何故、何故。

 釈然としないまま3週間が経ち、胸の内はモヤモヤとして苦しい。恐らく私の友人も私以上に辛い想いでいることだろう。助けられずに目の前の流れに飲み込まれていく姿を見るのはやっぱり辛いことだ。

 
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コーヒーブレイク    
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東京郊外に秋がやってきた。空が高くなり、

乾燥した秋風は色づいた木々の葉を揺すり、

風は流れるように色とりどりの妖精たちと舞いながら、彼方に消えていきました。


カエデ、ハナミズキ、ナナカマド、ウルシ、みんな紅く染まって、

小さな森を鮮やかな彩りにしてくれます。もう、冬がそこまできています。