俯き加減に詰まるような呼吸でポツポツと話しをはじめ…辛かったことを思い出したのか暫く言葉もなくしばし沈黙のひととき。ふたたび、真剣な眼で一気に話し始めたかと思うと…惜しさの余りか涙を浮かべる。悲壮な面持ちで相談にいらしてから約3時間。 「もうお話しすることはありません…。」初めの緊張からすっかり解放され、3時間前の顔面蒼白の状況とはうって変わった笑顔で云います。 「ず〜と辛かったんです。夜も眠れなかったし、周囲の人から話しかけられても、話の半分はうわの空でした。いつも胸の当たりのザワザワした感じだったのが…これでスッキリしました…。」と。 来訪された時は、背を丸めてかがみ気味であった方がうって変わったように背筋をシャンと伸ばし、朗らか…とも感じとれる明るい声に変わっているのです。 それは安堵感なのでしょうか…ご自分なりにこれから先にとるべき行動が頭の中に具体的に整理できたのか、眼をキラキラ輝かせ素晴らしい表情となって帰られる。 人は大きな障害に直面した時、それが一度でも経験していたことであれば慌てることもなく解決することができる。しかし、問題が自分の力ではどうにも解決できないと感じた時には悩み、戸惑い、怯え、苦しみ、恐怖心となって心身を蝕むことさえあるという。
年号が「平成」に変わり、成長し続けた日本経済が一気に冷え込み、大手企業の倒産に始まり金融機関さえもが経営の危機にさらされている現状は、殆どの人々が経験のない未知の出来事に翻弄されていると云っても過言ではない。 先祖代々の土地を手放さなければならなくなった人、土地神話に踊らされ多くの財産を失った人、それが原因で親族間の争いが起き家族の絆が壊れてしまった人。 事業が急激に膨張しバブル経済の崩壊によって、売上激減に対応しきれず倒産する中小企業、金融機関の統廃合により融資条件が変わり資金繰りに行き詰まる中小企業経営者も、何処にもぶつけようがないどうにも遣りきれない思いをもっている。