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Vol.52
家族に持病のある社長の会社が倒産したら…

 

 


家族に持病のある社長の会社が倒産したら…

 
 

「先生!頑張ってみましたがやっぱりダメです…」と言ってきたのは、1年ほど前に相談にいらした社長でした。
お預かりした資料からスクリーニングをした結果、「今なら、会社を閉じても社長自身も再起の期待が持てる結果が出るはず…」と、事業の継続を思いとどまることをおすすめしたことを想い出した。

税理士と相談したら「金融機関が融資をしてくれるのなら…」と財務資料をまとめてくれたので、何とかこの借入で切り抜けられると、頭の中は更に続けるという答えしかないようでした。
しかしその借入は保証協会の保証付きでしたが社長の連帯保証だけでは無理だったので、病弱で療養中の妻の父親に連帯保証人になってもらえることになったとのことでした。

業界の市況を見ても決して安心できる状況とは思えず、もしもこの借入でも乗り切れなかったら、実家にどれだけの迷惑がかかるのかを繰り返し話したのですが、結局その話を最後に連絡がなくなってしまいました。こちらから電話を電話に出ないのでとても心配でした。

個人の連帯保証の額として1500万円は大金です。病弱の妻だけでなくその実家まで巻き添えにしてしまったことに深く反省はしているものの、今さら元に戻すことは出来ません。

借入が出来るようにと、社長の所得を多く見せるために役員給料も100万円としていたので、高い源泉税と社会保険料を支払うのもきつかったようです。でも銀行からの借入が出来た…??。但し、義父に連帯保証人になってもらって…??。おかしなことを平気でやってしまうのが、断末魔が近い会社の典型なのかも知れません。
いよいよ倒産の危機なのでしょうか。療養中の妻の状況も決して好転しているとは云えない状況のようですし、義父にはどのように話しを切り出したらいいものか…と悩む毎日で、眠れない日々を過ごしているということでした。


 

●無収入なのに高額な国民健康保険料の納付か…

 
 

「今いちばん気がかりなことは?」という問いに、義父に迷惑をかけることと、妻が療養中なので健康保険証は欠かせず、倒産して収入がなくなったときの高額な保険料のことだというのです。
確かに国民健康保険の保険料は、本人の前年度の所得に対して計算されてしまうので、月給100万円をもらっていたことがこんなところで影響してくるとは考えていなかったようです。
ふたたび資料を見せていただき、2時間ほどかけてスクリーニングをしてみました。売上計画、利益計画などから「事業計画書」を、試算表から「清算B/S」をつくり、3ヶ月、1年、3年の「資金繰り表」を作成してみましたが、再生させるには「神風に期待(?)」するしかないぐらいの状況でした。
何度数字を見直してみても、元気だった社長の気力がすっかり減退ししているのですから「受注計画」が期待できなく、「Xデー」までに何をしておいたらいいのかを知りたい様子でした。

@これからは社長の給料は支払わない。あるいは、決 算の直後であれば議事録を作成しさかのぼって1  0万円ぐらいに減額しておくこと。
A生活費は、社長が会社に貸し付けていた分を「借入 返済」としておくこと。今年度の所得がなくなれば 来年になって支払う「地方税」「健康保険料」が低 くなるからです。
B持ち家であれば「保証人」になった際に売却してす でに自分の所有物ではないと思うこと。住宅ローン  が残っているとすれば「ローンを完済」まではお金 を貸しているローン会社からの借り物だと思うこと。
C義父には、まず深々と詫びを入れること。そして全 ての状況を隠すことなく説明して、誠意をもって速  やかに対応すること。
D社長が精神的に強くなり健康であること。ひとりで悩ん でいないで、気がかりなことや問題などは先送 りせずに 「リスク・カウンセラー」に相談して速やかに解決して おくこと。


  ●保険の任意継続の手続きによって継続治療を…

 
 

それにしても、家族に病人がいることは何よりも気がかりなことです。
妻が、治療に専念できるようにするために「健康保険証」は必要なことです。すでに午後7時を過ぎていましたが、知り合いの社会保険労務士の事務所に電話して、気がかりなことを教えていただきました。
現在治療中で保険証を利用しているのであれば、会社が倒産して社会保険料の契約が出来なくなっても、大丈夫な方法があるというのです。
それは『任意継続被保険者』という取扱になり、会社を経由しない手続きのため、今まで会社が半額負担していた保険料を本人が負担することによりそれが適用できるのだそうです。
今まで高額の収入を取っていて高額の保険料を支払っていた人でも、2万8千円前後の保険料で『任意継続』が出来るようです。但し2年間だということですから、所得が低くなった時点で、『国民健康保険』に切り替えればいいのではないでしょうか。但し、納付がおくれると取り消しになってしまうので十分注意をしておくようにしないといけません。詳細は社会保険事務所か「総務省」のホームページで確認して下さい。
それにしても…、他人を連帯保証人にして会社を続けるというのは如何なものでしょうかねぇ〜。