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Vol.26
上工はその萌芽をを救い下工事はその既に成るを救う

     
  ●上工はその萌芽をを救い、、下工事はその既に成るを救う
 
 

 先日、小川環樹氏・訳の『老子』(中央公論新社)の中に書かれていた一節で、その意味は「名医は病気の初発期に治療し…下手な医者は進行してから治療する」と書かれてあり、疾病は予防や早期の段階での治療を重要視していると云うことです。

 西洋医学の考え方では「病気になったのは、身体に病原菌が入ったからなので…その病原菌を殺せば病気が治る。」といった「対症療法」が中心となっています。
  一方、東洋医学では「病気になったのは、身体に病原菌を排除する抵抗力がなかったからなので…身体の抵抗力をつけてやれば病原菌は排除でき病は治る」といった「根本療法」の考え方になります。

 言うなれば、東洋医学は予防医学であり「病気になりにくい身体」を作ることが根本であって、万一、身体のどこかに「あれっ!…」と思うことがあったら、例えそれがどんなに些細なことであっても速やかに対処することが大切だと云うことなのです。間違っても、「しばらく様子を見てから…、もしも問題になるようだったらその時は上手く解決するように…。」などと高を括っているような経営者であってはなりません。

 事業経営において、取引先が倒産することは常に想定内のこととして備えておかなければならないし、問題が起きたときに、如何にして機敏に対処し問題解決に当たるかと云うことが大切になってきます。


 
     
  ●常を知らざれば、妄作して凶なり  
 

また、老子は「知常日明、不知常、妄作凶、…(常を知るを明という。常を知らざれば、妄作して凶なり)」と云っています。これは、いつもそうであることを明察といい、そのことを知らないと闇雲にやってしまい災いに遭うことになる…と云うのです。
  これは現代における会社経営において最も大切なことではないでしょうか。

 経営者はもとより、顧問税理士、経営コンサルタントなど会社経営の一端を担う人は、その会社の体力が、外部からもたらされる障害に対して常に備えがある状態を確認することが大切であると云うことなのです。

 『虚』と云う文字を、TVニュースや新聞で頻繁に見かけることに、多くの人々が心を痛めていることと思います。会計虚偽報告、マンション強度設計の虚偽問題、エレベータ事故の虚偽報告、自動車の欠陥部品隠し、湯沸器の欠陥隠しと虚偽の記者会見、など…「あ〜ぁ、またかよ…。」と思うようなことばかりです。

 問題が起きたことが悪いのではなく、どの事例を捉えても、その問題に当たってきた経営方針→経営陣の体質→会社の体質→幹部社員の考え方→社員一人一人の考え方に、『虚』のたった一文字をないがしろにしていたという言葉しか見あたりません。

 会社として、経営者として、社員として、正しくあるべき姿がどういうことであるのかをきちんと知っていてこそ、問題が起きたときに其の対処方法が自ずと導き出されるのではないでしょうか。


 
  ●会計参与制度の導入で会社が変わる?!  
     平成18年5月より「会計参与制度」が法制化されてから3ヶ月が経過しました。
  制度化された背景は、残念ながら「日本の中小企業の決算内容には、余りにも見えない部分が多くあり、その実態を会社としてのあるべき姿にするため…」などと陰口が言われているほどで、また、それを否定する会計専門家の声も少ないことも事実のようです。

 会計参与制度を取り入れて決算申告をすれば、金融機関からは評価が高くなり融資も受けやすくなる…、税務の面で優遇条件が得られる…などと簡単に考えているような経営者であってはならないと思う。
  古くから云われ続けていたことだが、中小企業において「デスクローズ」をしたがらない経営者の体質を変革させるには会計参与制度は格好の制度であるといえるのでしょう。

 大手企業が高い利益を上げていることは大きく報道されているが、中小企業の中でも小・零細企業の経営者は未だに資金繰りが苦しく、経営が安定してきたという空気すら感じられないというのが実態のようです。
  2006年上期(1〜6月)の倒産件数が前年下期より 5.3%増えたという実態を鑑みても、日本の零細企業経営者の笑顔が見られるまでには、まだまだ時間がかかるように感じてならないのです。

 経営者や経営に関わる専門家は、「知常日明」という語句をじっくり噛みしめ「会社経営における当たり前のこととは何んなのか、当たり前のことを当たり前にしていくためにはどうすべきなのか…」を、改めて見直していくキッカケとして「会計参与制度」の中から経営の本質を学んでおく必要を感じてなりません。