Vol.12 二匹のカエルの残酷物語。その結果は…。
     
  二匹のカエルの残酷物語。その結果は…。  
  問題をかかえて多くの方が相談に来られますが、大きく分けて2通りのケースがあります。
あれよあれよという間に問題がドンドン片付き、サッサと再起して次の仕事に取りかかっている人。また、いつまでたっても資料が整わず、ダラダラと時間だけが過ぎ一向に問題が片付かないまま自分では始末がつけられず、家族全員を巻き添えにしている人。
少々残酷な内容ですがこんな話があります。
ここに2匹のカエルがいます。そして目の前には火を入れた2つのコンロがあります。
そして…1つのコンロの上に「A」の鍋を置きます。「A」の鍋には冷水が入れてあり、そこに1匹のカエルが泳いでいます。スイスイと心地よさそうに泳いでは…また一休み…の動作を繰り返しています。
さて、もう1つのコンロの上には「B」の鍋が乗せられています。ずいぶん前からコンロの上に乗せられていたのでグラグラとお湯が沸騰しています。そしてその沸騰状態の「B」の鍋にカエルを入れます。……。さぁ!それから…15分後が経ちました。どちらのカエルが生きているでしょうか?……と云うお話です。
答えは「B」の沸騰状態の鍋に入れられたカエルが生きていたと云うことです。

熱湯に入れられたカエルは、あまりの暑さに驚き瞬発的に鍋の外に飛び出したことによって生きていたと云うことです。鍋で活きエビを茹でる時には鍋から飛び出さないようにすぐに蓋をしていますが、まさにカエルの例と同じことです。
それでは「A」の鍋でスイスイと涼しげに泳いでいた蛙はどうなったのでしょう。はじめは冷水でしたが、徐々に水温が上昇して日向の水溜まりのような温度になります。カエルは少しずつ水温に慣れていくので、初めのうちは動きに大きな変化も見られません。 しかし、やがて冷水がぬるま湯となり、更に温度が上昇してある温度をすぎるころになると、カエルは必死にもがくように鍋の中で動き回るとのことです。
そして、高い湯温によって筋肉の細胞組織が破壊され、カエルは動けなくなり間もなく死んでしまったとのことです。(いつもは自分で確認しないと気が済まないのですが…この事例ばかりは実験はできませんでした。教えていただいた話で恐縮ですがエビの例で自分なりに十分に納得できています。)

 
     
  目先の心地よさを優先し… 目の前の問題を先送りにしないで…  
  問題を抱えて駆け込んでこられる方にも、「A」の鍋のカエル状態に気がつかないままの経営者が結構いらっしゃるのです。
徐々に売上が下がったあたりから、会社の預金を取り崩したり追加融資をしたりで資金繰りをクリアできました。しかし、売上減少に対する問題解決は後回しのまま再び今まで通りの仕事を続けているのです。売上減少に対処すべく行動をしていないのですから、資金繰りが改善せず再び何処かで資金を調達しなければならなくなっていました。やがて銀行への返済も滞りはじめ、当然追加融資を受けられなくなります。その後はサラ金からの調達が始まり、やがてノンバンクに駆け込んでも与信度がNG。そうなると街の裏金融のドアを叩くと云う世界に入って行くようになってくる。聴いてみると3年前からこの状態が続いていたというのです。
こういう人は「この仕事以外やったことがない何とか会社を残したい…。」「親から受け継いだ家だから今のままこの家に住んでいられないか…。」「家族もみんな同じ気持ちだ…」と、自分達の居心地のよいことばかりを考えていて、問題を根本から解決する行動を取ろうとしないのです。会って打ち合わせをするたびに同じ話が出てくるが、まるで不可能な希望ばかりを云って帰って行きます。しばらく連絡が途絶えたので気になり、電話をかけて状況を確認するともっと大変なことになっていました。
息子や娘に頼んで、サラ金から借りさせてたり、親の借入の連帯保証人にして新たな借入をしていたのです。あれほどまでに新規の借入はしないと約束していたのに…。残念ながらこういう人は、殆ど立ち直れないまま終焉を迎えることとなります。
でも、こんな人ばかりではありません。徐々に売上が下がってきたところで取引先が倒産し不渡りになった…と相談にいらした社長がいました。この社長は判断が速いというか、目先の些細なことにこだわらないというか、実に思い切りが良くあっさりしたもので行動も早いこと早いこと。
まだ債務が残っている不動産がありましたが、今なら売却すれば手元に幾らか残るし、毎月の返済から解放されるのであればそれが一番スッキリする…とわずか3週間で売却してして幾ばくかの現金を手にしました。次は、会社にあった仕掛品や商品類もバッサバッサと売却し、賃貸で借りていた倉庫を空けて賃貸契約も解除してしまった。実に鮮やかな手際よさに、この社長なら必ず再起できる…と直感した。
目先の欲に溺れてしまうと普通なら見えていたはずのものまでが見えなくなってしまうのでしょう。
「A」鍋のカエルにならないように…マズイ!…と感じたら問題を先送りせず潔い決断ができる経営者が再起への条件なのではないでしょうか。